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研究紹介 極域の雲

北極域は地球温暖化が顕著に現れる領域であると言われています。 極域に温室効果をもたらす要因の一つである雲についての研究事例を紹介します。

本研究室では、北極Ny Ålesundにおける観測データ解析を行うことにより、雲の時空間変動について調べています。

観測装置の一つは全天カメラです(図1)。 装置上部の魚眼レンズとデジカメでおなじみのCharged Coupled Device (CCD)の組み合わせで、天空全体の様子を約10分毎にデジタル撮影しています。 レンズの上に覆い被さっている黒い帯はシャドウバンドと呼ばれ、太陽光が直接CCDに差し込むことを妨げています。 これによりCCDの経年劣化を緩和します。


図1 全天カメラ。

全天カメラで撮影された天空の様子の一例が図2に示されています。 2007年6月18日の現地時刻17時の撮影画像です。 午後5時なのに比較的空が明るいのは、観測サイトの緯度が高いからです。 極域の夏は太陽が沈まない、いわゆる白夜となります。 ただ、太陽は沈みませんが、太陽高度は定常的に低いです。 画像を観ると白い雲が空に分布していることがわかります。 撮影されたデジタル画像を処理することにより、天空全体に占める雲の割合、すなわち雲量を推定します。


図2 全天カメラの撮影画像(2007年6月18日1800 UTC)。

雲の高度はマイクロパルスライダと呼ばれる装置を用いて計測することができます(図3)。 これは、地上に設置した観測装置の上部から短いパルス状のレーザー光線を放射し、上空の雲に当たって跳ね返ってくる迄の時間を計ることによって、雲底の高度を推定します。 観測は約1分毎に24時間連続で行われています。 観測装置自体が出す光線を利用するので、太陽が昇らない極域の冬、すなわち極夜の期間でも観測を行うことができます。


図2 Micro Pulse LIDAR (MPL)。


謝辞

この研究は国立極地研究所との共同研究で行われています。