対流圏メタンは、産業革命以降急激に増加し、200年前と比べて2倍以上の濃度になっていて、その原因が人間活動によるものだと考えられている温室効果ガスである。(左図参照)
右の図は、現在の大気における各温室効果ガスの温暖化寄与率を示している。
二酸化炭素は、メタンに比べ大気中に豊富に存在しているため最も寄与率の高い化学種である。
一方で、二酸化炭素よりも1分子あたりの温室効果が強いメタン(約20倍)は、温暖化寄与率が二番目に高いとされている。
メタンの発生源は、主に湿原、反芻動物(家畜)、水田などである。下図に、現在考えられている各発生源と各消失源の割合を示している。
メタン削減のためには、どの発生源からどのくらい放出されているかを把握することが重要であるため、日々研究が行われており、未だ不確定な発生量の定量化とともに、新しい発生源の発見も今後期待される。
世界各地でメタンの地上観測が行われており、温室効果ガス世界資料センター(WDCGG : World Data centre for Greenhouse Gases)のウェブサイトからデータをダウンロードできるようになっている。
下の図は、各観測点におけるデータをプロットしたものである。(x:時間、y:緯度、z:メタン混合比)
陸地が多く、人間活動の活発な北半球で濃度が高く、ここ20年の間に濃度が増加していることが分かる。
このような地上観測の結果から、メタンの季節変動や長期トレンドの解明が行われている。
一方で、地上観測点は、発生源の影響を受けない地域に存在しているものが多く、大気中でよく混合されたメタン濃度を知ることができるが、発生源の特定や発生量の定量化をすることが困難であるという側面をもつ。
そこで、近年、衛星観測による全球的なメタン濃度の測定が行われている。
現在のところ、2002年3月に打ち上げられたESAの地球観測衛星(ENVISAT)に搭載されているセンサ(SCIAMACHY)による観測が主である。
現在の研究の目的は、SCIAMACHYで観測された大気中メタンデータ(提供:HEIDELBERG大学)の精度や特徴を把握することである。
そのためにはWDCGGのサイトから取得できる地上観測データや、国立環境研究所より提供して頂いた航空機観測データとの比較をする作業を行っているところである。